第一章 第6話|未来は、一人で抱えなくてもいいことを知った。

人は未来のことを考えると、不安になる。

親の介護。

年齢。

老後。

物価。

健康。

以前の私は、その不安から逃げることができなかった。

まだ起きてもいない未来を何度も頭の中で繰り返し、そのたびに心まで暗くなっていた。

「この先どうなるんだろう。」

「一人で生きていけるのだろうか。」

そんなことばかり考えていた。

でも、今は少しだけ考え方が変わった。

未来を考えなくなったわけではない。

ただ、「その時に考えればいい」と思えるようになった。

その代わり、今日できることを今日やる。

母のために、そして自分のためにご飯を準備する。

ブログを書く。

ジムへ行く。

それでいい。

そんな一日一日の積み重ねが、未来を少しずつ育てていることに気づいたからだ。

この考え方が変わったきっかけは、仕事だった。

数年前までの私は、「自分がやればいい」が当たり前だった。

自分が残業すればいい。

自分が我慢すればいい。

言いたいことがあっても飲み込めばいい。

誰かに頼るという発想が、私にはなかった。

小さい頃から、「人に迷惑をかけるな」と言われ続けて育った。

父を亡くし、母子家庭というだけで「かわいそう」と思われることが、私は嫌だった。

だから、人に頼ることよりも、一人で頑張ることを選んできた。

相談する方法を知らなかった。

知っていたとしても、どう相談すればいいのかわからなかった。

だから、一人で抱え込むことだけが、私の生きる方法だった。

でも職場では、年下の仲間たちが少しずつ成長してくれた。

仕事を任せられるようになった。

「今日やる仕事は今日やる。」

「今やらなくていい仕事は明日に回す。」

そんな業務分担ができるようになり、残業も減っていった。

その時、初めて気づいた。

自分が全部背負わなくても、仕事はちゃんと回る。

この経験は、仕事だけでは終わらなかった。

母の介護も同じだった。

最初は、ケアマネジャーに相談しても思うように動いてもらえず、「入所施設を探すならご自身で」と言われたこともあった。

正直、心細かった。

でも、そこで諦めずに地域包括支援センターへ相談した。

すると状況が少しずつ動き始めた。

その経験から知った。

相談先は一つではないこと。

そして、一人で抱え込む必要もないこと。

私は今でも未来に不安がある。

親の介護も続いている。

老後も心配だ。

物価は上がる。

健康も気になる。

でも、不安がなくなったから前を向けるようになったのではない。

一人で抱え込まなくてもいい。

そんな経験を少しずつ積み重ねてきたことで、未来を必要以上に怖がらなくなったと思う。

未来は、明日突然やってくるものではない。

今日という一日が、静かに未来を育てている。

そして、その未来は、一人で育てるものでもない。

人を信じ、必要な時には助けを借りながら、一歩ずつ育てていけばいい。

ワンワンへ。

昔の私は、一人で頑張ることしか知らなかった。

人に頼ることは、弱いことだと思っていた。

でも、それは違った。

人に頼ることは、弱さではなかった。

誰かに助けてもらうことも、誰かを信じることも、人生を前へ進めるための大切な力だった。

52歳になった今、ようやくそんなことを少しずつ知り始めた気がする。

もう、一人で抱え込まなくてもいいんだよ。

この言葉が、ワンワンたちそれぞれの人生を見つめる、小さなきっかけになりますように。

Back and Peace.

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